第2回:人気ティードリンクを支える、サプライチェーンのスマート化
第1回;中国最新ティードリンク事情で、中国の最新ティードリング情報を通じて、単なる流行りの飲料としてではなく、今の中国消費者のライフスタイルや価値観の変化、さらには新しい文化や経済までも創り出す存在へと価値を拡大していることを紹介しました。
なぜ、中国のティードリンクブランドは、短期間で多彩な商品を開発し、市場展開できるのでしょうか。
その答えは、従来の飲食ビジネスの枠を超えた、サプライチェーンのスマート化と最適化にあります。
本記事では、「ニーズをいち早くつかみ、商品化し標準化、効率的に届ける」仕組みを支え、進化し続けているティードリンク業界のサプライチェーンやスマート化について紹介します。
原材料の安定調達に欠かせないスマート農業
大手ティードリンクブランドは、独自のサプライチェーンシステムを開発し、直営茶葉農園や茶葉園、果樹園などと提携して、生産量と品質を安定させより効率よく安定供給できる仕組みを作り上げています。
例えば、霸王茶姬は、雲南省や福建省にデジタル化された専用の生産基地・提携農園を持っていて、5Gを利用したIoT技術で土壌の温度や病虫害のモニタリングを行っており、残留農薬検査合格率100%を達成るするよう管理されています。
ブロックチェーン技術を利用したトレーサビリティの仕組みにおいては、消費者自身がQRコードから簡単に「茶園の区画」まで遡ることができる仕組みを作り上げています。
AIの活用も進んでおり、虫害予測システムにより害虫による被害を予め予知・防止することで「特級」と認定されるグレードの茶葉出荷率は95%以上を達成。気象予測と茶葉の成長自動判定システムを組み合わせて、茶葉の柔らかさなどから最適な収穫時期の判断などにも利用されています。
天候や農園による品質のばらつきを、デジタルの力を最大限に活用した「スマート農業」で標準化し、消費者には味や品質を保証し、情報を公開することによって信用・安心を提供しています。また、この「スマート農業」は、ティードリンクブランド側にも様々な価値を提供しており、例えば信頼性の高い仕入先を獲得し、長期的な関係づくりのベースとなるデータ取得に役立てています。

物流、在庫と発注管理のデジタル化と最適化
大半のティーブランドでは自社農場、自社加工・製造工場、冷蔵物流などの独自サプライチェーンシステムを構築していて、全でのプロセスをコントロールしています。この取り組みで、在庫コストを15%削減すると同時に、茶葉農園の収入も20%増やすことにつながったトップブランドもあります。
スマート農業の気候予測モデルで得た安定した生産量により、調達サイクルも最適化されているのです。
5GとIoTをフル活用した倉庫システムと冷蔵物流は、収穫された茶葉や果物を予冷庫に運びRFIDタグに情報を記録。記録されたデータから、物流トラックに積む適切な積載量を計算し、販売データと照合して数十分で最短輸送ルートを自動生成。輸送時の温度変化を0.5度以内に保つよう監視され、各店舗まで運ばれていきます。
デジタル技術による「収穫→冷蔵物流→店舗」のシームレスな仕組みは、輸送時に発生する腐敗や売れ残りなどのロスを5%以内に抑えるよう最適化されており、大幅なコスト削減を実現しています。
店舗運営もデジタル化
各ブランドによって、フランチャイズ・直営と運営形式は様々ですが、最適な出店場所を選ぶことはもとより、注文データから分析される消費者データを本部と各店舗で共有することで、発注タイミングや店舗売上高など運営全体をサポートする体制を作りあげています。
5GとIoTの技術発達がデジタル化を加速させ、これらの最新技術を利用してサプライチェーンを常にアップデートし最適化させることが、ティードリンク業界でトップブランドとして生き残るために必要不可欠となっています。
サプライチェーンのスマート化が生む、新たな価値
ティードリンクの原材料となる茶葉の多くは、山間など交通不便なエリアで栽培されています。各ティードリンクブランドは販売者の立場から、デジタルを取り入れて茶葉農園とウインウインの関係構築をしていますが、消費者からの新しい動きも出てきています。
スマート化された福建省の鉄観音茶畑農園では、消費者向けにアプリを通じて茶樹の生育状況を360度カメラで自分の好きな角度から遠隔操作できたり、茶葉収穫時期の決定に参加できる権利や、収穫・加工体験などを含む「デジタル茶園年会員」を募集。
1年3888元(約7万7千円)で販売されたこの会員制度は、発売当日すぐに完売したほどの人気に。
また、ティードリンクを通じて「ご当地限定ティードリンクブランド」や「生産者の顔が見える茶葉」へ興味を持った消費者が、その地域を旅してSNSで紹介するなど、新しいトレンドも生まれています。
ティードリンクの裏にある、サプライチェーンのスマート化は新しいブランド価値を創造するとともに、お茶や農業への関心を惹きつけ、旅行や体験など新しいトレンドも作り出しています。

まとめと次回予告 | AIとデジタルで進化した茶葉加工技術とドリンク製造機
中国のティードリンク産業の裏側にある、「ニーズをいち早くつかみ、商品化し標準化、効率的に届ける」ことをスピーティーに実現するデジタルサプライチェーンを紹介しました。
日本のビジネスへの応用例;
→ POSを使った、“市場優先”の商品開発
→ 自治体や各農家が個別に発信している情報を地域でまとめてハブ化。店舗・工場・物流・農業のリアルタイム連携を、地域で実現
次回は、さらに一歩進めて商品開発やフレキシブルな店舗運営を実現する、AIやデジタルを活用した茶葉加工技術の進化や、ドリンク製造機を紹介します。
コメント
コメント一覧 (5件)
[…] 、様々な地域の茶畑と提携して仕入れる必要があります。第2回:人気ティードリンクを支える、サプライチェーンのスマート化で紹介したように、5GやIoT技術を利用したスマート茶農園 […]
[…] の軽減等に役立っている仕組みの紹介は以下からどうぞ。 第二回;茶葉の成長や最適な摘み取り時期、害虫予防や天気予測 第三回:品質管理と店舗運営を軽減する自動化設備消費者 […]
[…] を実現できているのは、高度なサプライチェーンとスマート化の仕組みがあるからです。 次回は、原料調達から物流、需要予測までを支える中国型サプライチェーンの実態に迫ります! […]
[…] 、様々な地域の茶畑と提携して仕入れる必要があります。第2回:人気ティードリンクを支える、サプライチェーンのスマート化で紹介したように、5GやIoT技術を利用したスマート茶農園 […]
[…] の軽減等に役立っている仕組みの紹介は以下からどうぞ。 第二回;茶葉の成長や最適な摘み取り時期、害虫予防や天気予測 に使われるAIや仕組みについて紹介 第三回:品質管理と […]