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シルバー経済の中のロボット | 遠くの親戚より近くのロボット?【前編】

シルバー経済の中のロボット | 遠くの親戚より近くのロボット?
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シルバー経済の中のロボット | 遠くの親戚より近くのロボット?【前編】

すでに高齢社会に突入している中国は、ロボット技術で高齢化社会の課題を解決すべく、模索しています。

60歳以上人口はすでに3億人以上、世界保健機関(WHO)の高齢者の定義である65歳以上も2.2億人を超え、総人口に対する割合は15.6%、街中でも電動車椅子で移動する老夫婦や、老人代歩と呼ばれる一人乗りの電気自動車を目にすることも増えてきています。

今回は、中国の高齢社会の中のロボットの現状をお届けします。
前半で、中国の高齢社会の背景と高齢者が牽引する「シルバー経済」についてお伝えし、後半で「シルバー経済」の中でのロボット活用事例と、介護・医療系ロボットで注目されている企業を紹介します。

1. 高齢者の定義と中国の「シルバー経済」
2. 遠くの親戚より近くのロボット? ロボットを受け入れる土壌をもつ中国
3. 役割分担が腑に落ちる、ロボット・AI活用事
4. 介護・医療系ロボットで注目の企業
5. まとめ

高齢者の定義と中国の「シルバー経済」

高齢者と言っても、健康状態や仕事の有無、国によっても生活スタイルは様々。社会の高齢化について、世界保健機関(WHO)では以下のような基準を作っています。

<世界保健機構(WHO)の高齢者の定義と高齢化基準>
65歳以上を高齢者と定め、社会における65歳以上の比率によっていかのような基準を設けています。

高齢化社会(Aging Society);高齢化率7〜14%未満の社会
高齢社会(Aged Society);高齢化率が14〜21%未満
超高齢社会(Super-aged Society):高齢化率が21%以上

中国の2025年最新の基準は以下のようになっています。
しかし、実際の生活では、60歳以上であれば「高齢者」、社会における高齢化率等の計算はWHOの基準を参考に60歳、もしくは65歳で計算、社会保障上は以下を用いていたり、シーンによって基準が違います

初老(若い老人):60~74歳
老人(老いた老人):75~79歳
高齢老人:80歳以上
長寿老人:90歳以上
※直訳

現時点では、女性50歳(もしくは55歳)、男性60歳で定年を迎え、平均寿命は79歳(男性75.37歳、女性81.2歳)となっているので、性別や地域、定年後の生活スタイルなどによって見た目や年齢の感じ方は様々で、「高齢」「老人」はあくまで総称的に使われています。

この方々向けの商品やサービスの提供、高齢に向かう準備期間中の経済活動が「シルバー経済」
中国語では「銀髪経済」といい、改めて学びや趣味の習い事、旅行などへの消費をはじめ、生活の質(QOL=Quality Of Life)を維持するための消費や社会とのつながり、例えば医療やデジタル化社会へ対応するためのグッズ購入なども含まれています。

高齢化が進むにつれて、今後「シルバー経済」が活力を増し、生活保障や介護サービスなどの保証型消費から生活を楽しむための消費に変わるだろうと期待されています。

では、実際に介護を受ける側・介護する側となった時の生活の質はどう維持するのでしょうか。

中国統計年鑑2024( 国家統計局発表 )によると、高齢者扶養比率は全国平均45.93%。これは、15-65歳の人口に対する14歳以下+66歳以上の高齢者の比を現した数字で、現役世代の経済負担が高いことは明らかです。

本来、介護や医療が必要な方のための社会保障が、提供できない可能性が高いと言わざるを得ません。これを緩和・改善するための起爆剤が「ロボット」というわけです。

遠くの親戚より近くのロボット? ロボットを受け入れる土壌をもつ中国

ここ数年中国では、政府各部門協力して新技術の開発から応用シーンまでを創造することを大きなミッションとしており、来年正式に発表・推進される第十五回五カ年計画(十五五)の中でも注目されている、ロボット・AIやシルバー経済をキーワードに新しい産業を作り出す方向に動いており、高齢者政策「9073モデル」を掲げてすでに各地で様々な事例が発表されています。

※第十五回五カ年計画(十五五)関連記事はこちらから
中国注目の5大産業 | 政策ドリブン「十四五」最終年の動向から①
中国注目の5大産業 | 政策ドリブン「十四五」最終年の動向から②

<高齢者政策:9073モデル>
老後を自宅で暮らす人が90%、地域のコミュニティ(「社区」)を基盤に過ごす人が7%、施設に入所する人が3%となるよう高齢者社会体制を整えていく政策のこと。
都市化、核家族化(一人っ子政策)の影響で変わってきているものの、「老後は子供に頼る」「子供は親の面倒を見るもの」という概念が色濃く残っており、家族や親しい人と賑やかに老後を過ごすのは理想の家族像というような雰囲気があります。
介護施設への入所も現時点では富裕層が大半で一般家庭の現実からは程遠いため、自宅で暮らす人90%の高齢者の生活の質を維持するような画期的な商品やサービスが求められています。

現在の中国はスマートフォンがあれば、家に何でも運んできてもらえるインフラがあります。
食料品や日用品もスーパーアプリやネットショップアプリを使えば30分で自宅まで運んでもらえるサービスはすでに日常化しています。タクシー配車アプリを使って、子供が職場から車を手配して高齢の親をピックアップ、病院付き添いサービスを病院で待たせておくことも可能です。

都市部と農村部の差や、高齢者が操作できるかという問題はあるものの、こういったサービスを利用すれば、自宅で老後を過ごす高齢者が、現在の生活とほぼ同じ水準を保つことができる土壌があるのです。

自宅内に手すりや滑り止めなどを設置し、話相手になってくれるロボット、Iotを活用した体調管理、地域包括型のオンライン医療体制で緊急時は家族や地域の専門医療スタッフがかけつけるなど、立派な家庭内老人ホームの完成です。
自宅という快適な環境の中で、生活を助ける仕組みとしてロボットやAIを導入する「スマート老後」というコンセプトは、ごく自然に受け入れられています。

スーパーアプリ盒马とタクシー配車アプリ滴滴

シルバー経済の中のロボット | 遠くの親戚より近くのロボット?【後編】 に続きます!

最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事を通じて何かしらのヒントや情報を得てくださり、少しでもお役に立てたなら幸いです。

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