ロボット産業は深圳だけじゃない! 最新注目エリアと都市
ロボットやAI、ドローンなど中国ハイテク都市は深圳のイメージが強いですが、「ロボット産業」は既に国家級産業となっており、産業集積地が続々誕生しています。
今回は、中国ロボット産業の見学やサプライヤー探し、自社製品の売り込みなどにも参考となる、中国国内のロボット産業注目エリアや都市を紹介します。
また、中国ニュースでよく見る「長江デルタ」などの中国三大経済圏(地域)を表す言葉が、具体的に示す地域に属する都市やその最新概要もあわせて解説します。
中国三大経済圏を簡単解説
国経済・産業ニュースでよく見る「長江デルタ」「珠江デルタ」「京津冀」という言葉。これは中国三大経済圏のエリアの名称で、それぞれ中国経済において地域的特徴があります。このエリアは中国で経済や産業のニュースで頻繁に出現し、地域の特徴も常にバージョンアップする必要があります。
中国三大経済圏
長江デルタ:上海市、江蘇省、浙江省、安徽省
珠江デルタ:広東省内の9都市(広州市、東莞市、深セン?市、恵州市、仏山市、中山市、珠海市、江門市、肇慶市)と香港・マカオ
京津冀(けいしんき):北京市、天津市と河北省
※長江デルタは、「長江流域経済」の一部であるものの、別格で扱われることが多くなっています。「長江流域経済」は江西省、湖北省、湖南省、重慶市、四川省、雲南省、貴州省が含まれていますが、現在ではそれぞれに特徴的な産業や経済(例えば重慶市の自動車産業など)の発達をしており、エリア分けとして大きくなりすぎるためか、東海岸側を切り出して表現することが多くなっています。
長江デルタ
上海市と江蘇省南部・浙江省北部を含むエリア。
ここ数年で「長江デルタ一体化計画」が進められており、上海市と江蘇省・浙江省・安徽省全てが含まれて表現されることが一般化しています。
全国に18ある「1000万人以上の人口を擁する市」に4都市(上海市、蘇州市、杭州市、合肥市)がランクインし、全国26の「国内総生産(GDP)1兆元都市」にも9都市(上海市、蘇州市、杭州市、南京市、寧波市、無錫市、南通市、合肥市、常州市)が名を連ね、全国の3割以上を占めています。
地域一体で産業とテクノロジーの融合化を進めています。他の地域と比べると早くから工業化や都市化が進んだ地区が多いものの、道路・空路・鉄道など交通インフラを含めてより便利で環境に配慮した地域一体化が進められており、上海から近い南通市には上海第三国際空港の開発計画があります。
珠江デルタ
珠江の河口を取り囲む中国南部の低地地域。
「大湾区」とも呼ばれ、広州、深圳、珠海、 仏山、恵州、東莞、中山、江門、肇慶の9都市が含まれます。
1990-2000年代に多くの日本企業が進出、日本以外の海外企業やハイテク企業も集積しているエリアなので、都市名にもなじみがあるのではないでしょうか。
「粤港澳大湾区(えつこうおうだいわんく)」という香港・マカオ・中国広東省の3地域を統合したビッグベイエリア構想が国家戦略となっており、すでに香港・珠海・マカオを結ぶ世界最長の海上大橋「港珠澳大橋」が開通しています。
経済力・発展力ともに国内トップではあるものの、環境問題の緊迫性、労働人口比率の減少などもも深刻化していて、産業や環境のアップグレードができない企業は郊外や内陸部等への転居を求められることもあり、エリア内での競争が激化しています。日本企業はこの「転居」対応に何年も費やすことも。厳しい環境だからこそ、よりイノベーションや効率化が進み、急発展しやすいとも言えます。
京津冀
首都北京市、天津市、河北省から構成されます。こちらも「京津冀(けいしんき)産業協同発展実施プラン」が発表されていて、地域が一体化して産業の協同発展をしていくことを目標としています。
産業基盤の高度化・現代化レベルの向上のため、新エネルギー自動車とインテリジェント・コネクテッド・ビークル(ICV)、バイオ医薬、水素、IoT(モノのインターネット)、ハイエンドマザーマシン、ロボットの6分野の産業を育成することを明確化しています。
特に水素エネルギーの製造・貯蔵・輸送・利用の全プロセスの発展を支えるパイロット事業の代表的な都市である天津は、2025年8月に100名近くの日本の使節団を迎えたほどで、クリーンエネルギーやAI・自動運転、船舶などの分野で有効活用されることが期待されています。
【国家級産業】ロボット産業注目エリア = 三大経済圏
ロボット産業で注目されているエリアは、実は三大経済圏そのもの。経済の要となる地域が全てロボット産業に関与していることからも、ロボット産業が国として強力に後押ししている産業であることがわかります。
それでは、各エリアのロボット産業の特徴を見ていきましょう。
中国ロボット産業注目エリア
上海、蘇州、合肥、杭州などの新進気鋭「長江デルタ」
深圳を中心としたサプライチェーン成熟「珠江デルタ」
小米・百度など大手と中小実力派企業と政府の融合「京津冀」
長江デルタ | ハイクオリティな産業集積、新興企業
元々製造業が盛んで、自動車や家電、医療分野などの国内外企業の大規模工場が数多くあったことから、ロボット産業の高品質部品サプライチェーンが充実しています。
ロボットまたはその部品を製造している企業がすでに約5000社あり、工場管理なども外国企業の影響を受け効率化・スマート化も比較的早くからすすめられ、生産能力は全国の半分になると言われています。
ロボット開発・製造に役立つ特許を持つ企業や研究機関・大学が多く、特許数は8万件以上! 国家級のロボット検査・評価センターも設立されているエリアです。
新製品・技術に関心があり収入も比較的高い消費者が多いこともあり、開発・研究・製造から市場(消費)まで高いレベルで産業集積化しています。
今後クラスター化して地域全体の競争力がさらに増すことでしょう。
珠江デルタ | 豊富なサプライチェーン、深い実績で先端を走る
工業ロボットの40%以上を生産している珠江デルタ。
74,000社以上がロボット生産にかかわっている密度の高いエリアでもあります。
古くからモノづくりのサプライチェーンが密集しており、「30分で入手できない部品がない」「ここにないものは世界中どこにもない」などとも言われています。
世界各地からバイヤーが訪れている有名なエリアのため、最新の顧客ニーズとそれに対応・実現するモノづくり企業間の競争が止まることなく動き、モノづくりのサプライチェーン自体が成熟していることが最大の強みです。
ここにファーウェイやテンセントなどのハイテク企業がAIチップなどとロボット技術を融合、牽引しています。コンシューマ向けロボット(UBTechなど)や特殊用途ロボット分野にも強く、世界トップの実力と実績を持つエリアと言えるでしょう。
京津冀 | 中小企業の技術力、産学研協同
合計33もの手術ロボット特許を持つ、目立たないながらも技術や特色ある実力派の中小企業と、アルゴリズムに強い百度・小米など大手の研究開発力で技術を牽引しています。
政策の恩恵も受けやすい「地の利」から産学研連携のシームレスな実行を強みに、実際の生産力は天津、システム設計・運用等に優れた河北省など、得意に集中する役割分担が明確です。
中国北部が連携し、スマートホーム領域やロボット産業に影響力のある技術エコノミーを形成しています。
絶大な経験と影響力を持つ大手企業と、技術力のある中小企業が政府の支持のもとに協調し、地域全体の産業力を高める仕組みは、技術エコノミーだけでなくロボット産業全体のエコノミー形成を推進する大きな力をもつエリアとして期待されています。
ロボット・AIで注目される都市 深圳 vs 杭州

珠江デルタの深圳と長江デルタの杭州は今、「ロボット産業の第一都市になるのはどちらか」と特に注目されている都市です。
2025年10月16日、ドイツのハイテク企業NEURA Roboticsが中国拠点を浙江省杭州市に開設しました。
深圳では、2025年10月17日に日本の磁気製品応用技術の専門メーカーさんが地元のロボット協会と共同でセミナーを開きました。
海外企業の中国ロボット産業への参画を伝えるニュースもこの2つの都市が中心になっています。
フロントランナー・深圳と新進気鋭・杭州
元々、深圳は世界中のバイヤーや研究者が集まる国際的都市として知られており、中国国内からも優秀な人材が集まってくるため、ロボットの歴史やサプライチェーン優勢の声が強く、新しい時代を切り開く「先駆者」。
一方、今年DeepSeekやUnitree Robotics社、BCI(脳とコンピューターをつなぐインターフェイス)研究のBrainCoなど新進気鋭企業が注目を浴びていることから最新技術への期待の声、中国国内トップのロボット研究力を持つ浙江大学、さらにはドイツのハイテク企業NEURA Roboticsや最近勢いのあるoオランダに本社を持つステランティスが出資している新興電気自動車メーカーのLeapmoterなど、話題が尽きない杭州。
どちらもロボット産業を牽引する都市として、今後もますます注目されていくでしょう。
まとめ
ロボット産業の注目エリアと中国三大経済圏(地域)の特徴をお伝えしました。
中国ロボット産業注目エリア
* 上海、蘇州、合肥、杭州などの新進気鋭「長江デルタ」
* 深圳を中心としたサプライチェーン成熟「珠江デルタ」
* 小米・百度と中小実力派企業と政府の融合、産学研協同「京津冀」
ロボット産業は、国として強力に後押ししている国家級産業
今後は深圳と杭州に注目!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
中国のロボット産業の理解を深める第一歩になれば幸いです。
本ブログは、中国で中国で発表されたニュースを元に、30年以上続く金型メーカーの経営者目線で最新情報をお届けしています。


 
		 
		 
			 
			