中国国際工業博覧会(CIIF2025)レポート【前編】
2025年9月23-27日まで、上海国家会展中心にて中国国際工業博覧会(CIIF2025)が開催されました。1999年から始まったこの工業博は、今年第25回目となりました。
中国国際工業博覧会(CIIF2025)レポートを【前編】【後編】の2回に分けてお届けします。
世界最大級の製造業のための国際展示会として有名な、ドイツで毎年行われている西の「HANNOVER MESSE」と、中国で行われている東の「中国国際工業博覧会」を見れば、世界の製造業の「今」と「これから」が見えてくるでしょう!
中国国際工業博覧会(CIIF2025)の概要

「HANNOVER MESSE」(ドイツ開催)と並ぶ、製造業(工業)の重要な展示会
今年の第25回を迎えた中国国際工業博覧会は、世界28カ国からの出展者が一堂に集結、133もの国から参観者が訪れました。(主催者発表)
1999年から始まったこの工業博は「中国製造(メイドインチャイナ)」から「中国智造(中国のスマート製造)」へと変化している歴史の中で、中国の工業・製造業界における最先端技術や製品、ソリューションなど、製造業のデジタル変革を巡る最新トレンドをいち早くつかめる場として世界から注目を集めています。
中国は、ドイツで毎年開催されている産業見本市「HANNOVER MESSE」の東版と位置付けており、特にここ数年はFA(ファクトリーオートメション)、生産・製造や設備のAI化・DXを実現する最新技術の展示が目立っています。
関連する新素材、設備などサプライチェーン動向、エネルギーや環境対応型などを含め、開かれた産業エコシステムの持続的な共同発展を目指し、年々規模を拡大しています。
自分で研究・開発し、イノベーションを起こす時代
今年は、「十四五」最終年ということもあり、この先5年の方向性を体現する本工業博の中でも工業の発展を紹介する特設コーナーが設置されていました。
まとめ・確認として、発展の足跡を見る中国の方や、海外からの参観者がじっくりと見ていたのが印象的でした。
中国注目の5大産業記事でも解説したように、今後注目される5大として注目されているスマート製造(伝統的な製造方法とAI・IoTなどデジタル技術の融合)が、ロボット産業を帯同してさらに進化していくことは間違いなくありません。
他国から技術や物を単純に買って組み立てる時代から、すでに自分たちで研究・開発しイノベーションを起こす時代に入っていることを、印象づける展示会であると言えるでしょう。

製造業の課題を解決するエンボディドロボット+AI
工場で人間と一緒に働くロボット。
カメラやセンサーを利用して、自動的に合否判定をしたり、重いものを整理し運んでくれるなど、ビジネスシーンでロボットを見ることはすでに珍しいものではなくなりました。しかし、一度自動化した生産ラインを改造するのは、大変!
今までのロボットのボトルネック、特に中小企業にとって課題となっているのは、導入や運用にかかわるコストや、製品の切り替えや工程の変更対応の難しさ、それらをロボットで運用する際の人材不足ではないでしょうか。
産業用のエンボディドロボットは、工場で実際に必要となる動作、つまり視覚や聴覚、触覚などを備え同じ動作を連続して行うことが求められます。二足歩行・四足歩行のロボットでは、動作の複雑さや強度の問題から関節部品や制御システムなど多大なコストがかかりますが、例えば上半身の動きに限定することで大幅なコストダウンになります。
溶接やセントラルキッチンで大量の野菜をカットするなど、人間並みのシームレスな動作ができるよう、各関節部品の高精度化が進んでいます。中国では、「エンボディドロボット」には、AGV(無人搬送車)やAMR(障害物回避やルート再設定可能な自立走行運搬ロボット)、ロボットアームなども含まれることが多いです。

本工業博で展示されていたのは「エンボディドAI」
従来の視覚や聴覚、触覚など「知覚」「AI」を複合的にプラスし、ロボットが自律的に学習し、工業環境の複雑な変化をを理解し、意思決定できる「脳」をプラスすることで、より人間と協調し様々な問題に対して素早くレスポンスする「エンボディドAI」が主流であり、かつ実用レベルに入っていることを強く感じました。
新しい工業のカタチ、スマート製造に限界なし!
世界の工業へ、ロボット業界の発展へ、攻めの姿勢な中国国際工業博覧会(CIIF2025)レポート【後編】へ続きます。
