2025国際ロボット展 | 中国と日本のロボット 中国ロボット企業紹介
2年に一度開催される国際ロボット展。2025年12月6日(土)まで東京ビッグサイトで開催されていた今年のロボット展は、中国企業もたくさん出展していました。
世界の市場の半分以上が中国企業と言われる、ロボット業界。
国際ロボット展のレポートと、中国ロボット関連出展企業紹介、日中展示の違いをお届けします。
2025国際ロボット展概要(最新データ)

1974年の第一回開催から、今年で26回目を迎えた国際ロボット展。
「ロボティクスがもたらす持続可能な社会」をテーマに、673企業・団体が出展、入場者数も4日間で15万人を超え、過去最大の規模となりました。
注目中国ロボット企業
多くの人の注目の的となっていたのは、ユニツリー社。ヒューマノイド型ロボットの代表ともいえるユニツリー社ブースは常に人だかり。格闘技をするロボットやマラソン、ダンスなどの動画で1度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

ユニツリー社以外にも、今年は100社以上の中国企業が出展していました。
ヒューマノイド型ロボット、エンボディイドロボット、4足歩行ロボット、協働ロボット、AGV以外にも、AIやロボット部品を扱う企業など、様々です。
STANDARD ROBOT(斯坦德机器人)& Mech-Mind(梅卡曼德机器人)
Mech-Mind(梅卡曼德机器人)の3DビジョンカメラやAIシステムソリューションを導入した、STANDARD ROBOT(斯坦德机器人)AGVやエンボディドロボットが注目を集めていました。
海外導入実績が半分以上を占めているSTANDARD ROBOT(斯坦德机器人)の製品は、日本企業はもとより欧米の企業からも様々な質問がされていました。日本市場には既に進出していますが、来年以降、さらに海外市場を拡大する予定だそうです。
Mech-Mind(梅卡曼德机器人)は、日本のロボット企業のほぼ全てと取引があるとも言われており、安定・安全なソリューションを提供できる中国企業として、評価されています。

AGILE ROBOTS(北京思灵机器人)
まるで人間のように器用に動く指が特徴のヒューマノイド型ロボットと産業用ロボットアームを展示していました。
器用な手は世界最高クラスと評価されていることもあり、ブースに訪れる方が途切れることなく、かつ玄人のような方が多いのが印象的でした。全ての指先と関節にトルクセンサーを内蔵しており、認知能力と繊細な触覚技術を融合させた高い適応能力を発揮するよう、階層型AIで設計されています。
人間と共存するロボットを目指しているこの企業は、実世界での産業データ収集、人間の実際の動作、シミュレーション等を組み合わせたAI訓練を取り入れており、ドイツの技術を基本にハードもソフトも自社生産を主としているそうです。
※ドイツ航空宇宙センターのスピンオフでミュンヘンで設立されたハイテク企業で、創業者は中国人。北京本部には300人以上の技術者が在籍。

その他ロボット部品系企業
ロボットの関節部品や、サーボモーター、指先の繊細な動きや制御を行うトルクモーター、各種電源、ベアリング類など、目立たないながらも工学博士や専門家、さらには工作機械設備関連技術者など、興味深く見入っている様子が印象的でした。



展示の違い | 日本企業vs. 海外(中国)企業
今回の注目はやはり“ロボット+AI”でしたが、日本企業と海外企業の展示には大きな違いが見られました。
日本が「今考えられるロボットが必要な市場の深掘りをして、工業分野における自動化を極める方向」、中国は「市場を増産」をして、サプライチェーンの優位性とAI汎用能力を利用して、ロボット自体の普及を目指しているように感じます。
日本企業:効率を上げるためのAI・ロボット利用
大半の日本企業ブースでは(川崎重工以外)、AIは実務的な「工業用」として活用されていました。
展示内容は、ビジュアルAIを用いて訓練不要または簡単な訓練だけ方向がバラバラな部品をきちんと揃えて搬送したり、不良品を識別したりするための機能を実現していました。目標はズバリ、人員とエネルギーコストを削減すること。
ヒューマノイドロボットにおいても、工業分野における「ツール」であり、現場の課題を解決できるだけでなく、工業レベルの信頼性と耐久性を備えていることが最重要とされているようです。
海外(中国)企業:プロダクト重視。中国企業は「+サプライチェーン」
単なる製品開発のプロセスにとどまらず、市場競争や顧客ニーズに応じた戦略的なアプローチを重視し、中国企業はさらに完成された厚みのあるサプライチェーンを武器によりコストに訴えかける展示だと感じます。
例えば、「ネジを同方向にそろえて運ぶ」のではなく、「洗濯物を折りたたみタンスにしまう」デモンストレーションやロボットにボクシングをさせ、ロボットオリンピック競技を議論するなど、その完成度の高さや必要性の有無よりも、新しい市場を創造し、その裾野を広げるような展示をしているのが特徴的でした。
どちらが正しい・技術が上かという議論ではなく、日中のロボットは目指している分野が違い、同質化せずに済むと良い方向に考えると、スッキリします。
2024年下期から、工業(産業)用ロボットの受注は下降気味ではあるものの、究極の効率と精度を求めるミクロン級の固定アームや決められた場所に運ぶAGVなどが得意な日本と、ヒューマノイド型ロボットや4足歩行ロボットで、従来の工業(産業)用ロボットでは解決が難しい場所や、家庭などでより安全・安心なパートナー的存在を目指す中国。こんなイメージの展示の違いでした。
まとめ
2025国際ロボット展レポートをお届けいたしました。
会場内では、「日本は負けたな」「中国ロボット、思ったより滑らかな動きだな」などといった声も聞かれました。また、日本の展示会ではよくある風景のモノづくり展示や体験コーナー、地域密着型共同出展などは、中国の方にとっても新鮮だったようで、体験コーナーでは鋳物作りに励む方もいらっしゃいました。
あらためて「展示会」の在り方や日本らしい細やかさを感じることができました。
ロボット+AIという新しい領域で、日中が「ゼロサム」ではなく、お互いが得意な領域を追求してともに発展できればいいなと思っています。
* 2025国際ロボット展は過去最高の入場者を記録!
* 中国ロボット企業;STANDARD ROBOT(斯坦德机器人)& Mech-Mind(梅卡曼德机器人)、AGILE ROBOTS(北京思灵机器人)と、その他ロボット関連部品企業100社以上出展
* 日本企業と海外(中国)企業の違いは、レベルではなく「方向の差」
日本企業:効率を上げるためのAI・ロボット利用
海外(中国)企業:プロダクト重視。中国企業は「+サプライチェーン」
最後までお読みくださり、ありがとうございます。中国情報のアップデートに少しでもお役に立てたら幸いです。
本ブログは、中国で発表されたニュースを元に、現地で30年以上続く日本の金型メーカーの経営者目線でまとめてお届けしています。

