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シルバー経済の中のロボット | 遠くの親戚より近くのロボット?【後編】

シルバー経済の中のロボット | 遠くの親戚より近くのロボット?
目次

シルバー経済の中のロボット | 遠くの親戚より近くのロボット?【後編】

すでに高齢社会に突入している中国は、ロボット技術で高齢化社会の課題を解決すべく、模索しています。

60歳以上人口はすでに3億人以上、世界保健機関(WHO)の高齢者の定義である65歳以上も2.2億人を超え、総人口に対する割合は15.6%、街中でも電動車椅子で移動する老夫婦や、老人代歩と呼ばれる一人乗りの電気自動車を目にすることも増えてきています。

今回は、中国の高齢社会の中のロボットの現状として、「シルバー経済」の中でのロボット活用事例と、介護・医療系ロボットで注目されている企業を紹介します。

シルバー経済の中のロボット | 遠くの親戚より近くのロボット?【前編】はこちらから

1. 高齢者の定義と中国の「シルバー経済」
2. 遠くの親戚より近くのロボット? ロボットを受け入れる土壌をもつ中国

3. 役割分担が腑に落ちる、ロボット・AI活用事
4. 介護・医療系ロボットで注目の企業
5. まとめ

役割分担が腑に落ちる、ロボット・AI活用事例

現在活用されているロボットは、主に3つの役割に分かれています。利用者が享受する新しいサービスと安心、導入する側のメリットとなる人員削減、サービス向上。
双方の欲しいがわかりやすく実現できており、今後の進化に期待が持てる事例が数多く発表されています。

<ロボット活用事例の役割分担>
介助支援型:
掃除やごみ捨て、車椅子からトイレへの移動、血圧や脈拍を自動測定など主に日常動作を直接支援する役割

リハビリ支援型:
薬の管理や、外骨格ロボットを装着してリハビリをサポートし記録、負荷の自動調整や転倒時のお知らせなど、主に健康回復をサポートする役割

精神サポート型:
話相手、歌やダンスなどのレクリエーション補助など、主に高齢者の心に寄り添う役割

ただし、以下に紹介する事例からわかるように、どれも病院や介護施設での事例であり、一般家庭での導入はあと数年かかると見込まれています。

介護ロボット「大頭阿亮」

老人ホームで24時間パトロールを担当するロボット「大頭阿亮」は、異常を発見するのが得意なロボット。転倒している高齢者や不審者の発見はもちろんのこと、段差や障害物など察知し、事前に知らせる機能もあります。
個室のベットに長時間に戻らない、またはずっと同じ姿勢の場合などは、人を呼んだり姿勢を変えさせ、床ずれを防止します。その動線の中で、定時に薬を届けるなどの作業も可能です。このロボットを導入したことで、それまで介護福祉士等が行っていた作業の約60%削減に成功しています。

大頭阿亮のPR(ホームページより)

西安リハビリセンター

長期間に渡り車椅子生活を送っていた68歳男性が、新たに当センターに導入された脳波等データ収集機能付きの外骨格ロボットを装着しリハビリに励み、杖をつきながら歩けるまでに回復。
脳梗塞により下半身機能を失った男性も同様に外骨格ロボットを装着し座ったまま足を上下、開閉するリハビリから開始。最終的には補助なしで歩けるまでに回復したそうです。
リハビリを続けることにより、脳も刺激され健康回復につながった事例です。

上海交通大学医学院附属仁済医院「仁小愛」

AI医療助手の「仁小爱」は、病院に来る患者に「今日はどうなさいましたか?」という優しい声かけから始まり、会話をしながらどの科にかかるべきか適切にアドバイスし院内を案内。検査結果が出るとそれを読み上げ専門的な言葉もわかりやすく解説してくれる付き添いロボットです。不安になる患者の心のケアと限られた医療資源を有効活用するための補佐役として活躍しています。

介護・医療系ロボットで注目の企業

今中国で注目されている、江蘇省の3企業を紹介します。

江蘇艾雨文承养老机器人有限公司

2019年に設立されたこの企業は、上記「大頭阿亮」を開発した会社で最新モデルは5代目となっています。
2020年10月、「大頭阿亮」を発表・販売開始。またたく間に100台以上が売れ有名になりました。
1代目モデルは、介護・医療機関向けの監視パトロールロボットでしたが、バージョンアップを重ねて介助や対話、遠隔操作機能、高齢者にとっての安全を確保するロボットに成長しています。短期間で大きな成果を出しているこのロボットは、中国工信部(工業と情報技術を管轄する重要な行政機関)が発表する推薦ロボットリスト入りしています。

蘇州麦迪斯頓医療科技股份有限公司

2009年設立。デジタル医療・医療ビックデータシステム、救急救命・重篤患者への適切な医療サービスを提供するための地域包括センター構築分野において、評価の高い企業です。
2024年、中国国内ほぼ全土(省・自治区・行政特別区・直轄市など)をカバー、2400以上の介護・医療機関が利用しています。中国の最高科学技術機関である中国科学院の自動化研究所や中国心血管健康連盟などの機関と、AI研究開発分野で共同事業を行うなど、介護・医療系ロボットのネットワーク化・スマート化の分野において最先端を行く企業です。

南京偉思医療科技股份有限公司

2001年設立以来、リハビリ機器の開発・製造のトップメーカーとして知られる企業。
骨盤底(内臓を支える重要な役割があるそうです)・産後・神経・小児分野に強みを持ち、尿失禁改善やそれに伴う心理ケア領域に定評がありました。
長年蓄積されたノウハウを生かし、骨盤底筋肉リハビリテーション装置や認知機能障害治療ソフトウェア、反復経頭蓋磁気刺激装置、パルス磁場生体刺激装置などもに加え、美容医療分野の危機も開発しており、神経機能修飾や活動機能回復を目的とする機能回復リハビリ装置を介護・医療の現場に提供し続けています。
最近では、非侵襲型ブレインマシンインターフェース(BMI)の開発も積極的に行っており、リハビリ機器 + 神経系回復の先駆者として中長期的な発展を目指しています。

蘇州麦迪斯頓と南京偉思のホームページより

まとめ

中国の高齢社会の中のロボットの現状をお伝えしました。

介護施設や医療へのロボット普及はすでに始まっており、国策として今後数年の間に加速度的に発展し、一般家庭での利用事例も出てくるでしょう。
一般家庭では、動線が複雑で高齢者個々のニーズに対応する必要があり、それを実現する技術と安全性の問題、価格の問題などクリアしなければ課題がたくさんあります。

ロボットを受け入れる土壌と市場がある中国で、誰もが便利で豊かな老後生活を享受できる未来は、思っているより早く来るかもしれません。

* 高齢社会と高齢者が作り出す新たな経済的活動が「シルバー経済」
* 老後を自宅で暮らす人90%、地域のコミュニティ(「社区」)を基盤に過ごす人7%、施設に入所する人3%の政策「9073モデル」
* 日常生活がデジタル化している中国は、ロボットを受け入れやすい土壌
* 介護施設や病院でのロボット導入が今後数年で加速
* ロボットが一般家庭に入るには、さらなる技術・安全対策・コストなど課題も

最後までお読みくださり、ありがとうございます。中国情報のアップデートに少しでもお役に立てたら幸いです。
本ブログは、中国で発表されたニュースを元に、現地で30年以上続く日本の金型メーカーの経営者目線でまとめてお届けしています。

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