MENU

都市別GDPランキング2025年Q3  | 底打ちから回復傾向の広州と急成長の杭州

浙江省杭州市
目次

都市別GDPランキング2025年Q 3 | 底打ちから回復傾向の広州と急成長の杭州

中国の国土面積は世界第4位。
日本の約25倍ある巨大な中国は、地域によって経済発展の状況や文化が全く違います。中国市場開拓やサプライヤー開拓において、この違いをしっかりと理解しなければ思わぬ遠回り、誤解をしてしまう可能性も。

今回は、2025年第三四半期(9月末)時点での中国都市別GDPトップ10を紹介します。

1. 2025年第三四半期・中国都市別GDPランキング
2. 回復傾向の広州と急成長の杭州 | キーワードは「製造業」
3. まとめ

025年第三四半期・中国都市別GDPランキング

第三四半期時点での中国都市別GDPランキングは以下の通りです。
中国の会計期1月~12月まで。1-3月(Q1)、4-6月(Q2)、7-9月(Q3)、10-12月(Q4)となり、日本とは違いますので注意してくださいね。

2025年Q3末 都市別GDPランキング

ランキングから見える4つのポイント

1. 実質GDP成長率を見ると、5位の広州以外は5%以上となっており、成都の成長率がトップ、北京、武漢も5.6%で、Q3の全体平均4.8%を全て上回っています

2. 2024年度同時期のGDP額の比較(増加額)だけで見ると、北京・上海・深圳の一線都市以外では杭州市(二線都市)がトップ、名目GDPの成長率では11.08%とトップ10の中で唯一10%越えをしています。また、成都・蘇州も堅調です。特に蘇州は、二線都市の中でも直轄市(北京・上海・天津・重慶)でもない「普通の都市」の中で常にトップ、毎年20,000億元を超えている都市です。

3. 2024年度同時期のGDP総額の比較(増加額)総額では4位の重慶を上回ったことから、広州は底打ちから回復傾向にあると言えるでしょう。

4. 10位の南京は、2024年まで全国平均以下で11位の寧波とGDP額はほぼ変わらない状態でしたが、今年は安定上昇傾向にあります。

【簡単解説】実質GDPと名目GDP
実質GDP:
ある特定の基準年の価格を使って計算されます。
これにより、実際に生産されたモノやサービスの量など、経済の実態や成長度合いをより正確に把握することができます。経済成長率を見る場合は実質GDPを用います。

名目GDP:
その時に市場で取引されている価格で計算されます。
物価や為替が反映されているため、物価が上昇すれば名目GDPも増加し、経済規模が大きくなったように見えますがリアルな経済の実態ではない点や、正確な前年・前期との比較には使えないことがあります。

一線都市、新一線都市、直轄市の詳細はこちらで説明していますので、ご参考くださいね。

回復傾向の広州と急成長の杭州 | キーワードは「製造業」

自動車産業依存から脱却する広州

広州は、1998年に本田が広州汽車と合弁工場を設立したことをきっかけに、自動車産業の発展が加速しました。一時期は日産・トヨタと日本の三大自動車メーカーが広州に揃って工場を持っていました。2010年頃には広州に150社近くの日系自動車関連企業が集結しており、広州市全体の自動車工業総生産額の80%近くを占めていたそうです。

しかし、中国ローカル自動車メーカーの台頭や新エネルギー車の急速な普及によって、ここ数年は日本の自動車メーカーの販売も振るわず、自動車産業が重要な産業であった広州の経済に陰りが出始めます。
事実、2024年の広州のGDP成長率は2.1%、増加額は308.94億元で、トップ10の都市の中で、成長率も増加額もともに最下位でした。

2025年Q3の数字から見ると、増加額だけでもすでに1,000億元を超えており、底を脱して回復傾向にあると言えるでしょう。

回復の理由として、はやり自動車の貢献が大きいものの、新エネルギー自動車産業がもたらす例えば液晶ディスプレイモジュール、アナログチップ、集積回路ウェハーなどの生産が増加していることと、ドローンや航空・宇宙産業、リチウム電池、太陽電池など他の産業の成長が挙げられます。

また、広州はビジネス環境の最適化、サービス品質、産業エコシステム再構築に力を入れており、エンボディドロボット関連、量子コンピューター、細胞と遺伝子などの医療分野、グリーン水素と炭素回収リサイクルなどの環境関連などの新産業の育成にも力を入れており、経済復活をバックアップしています。

広州の地下鉄

製造業を再度重視した杭州

杭州が属する浙江省は、もともと製造業が盛んな省でした。

2000年代からのインターネットの普及やデジタル技術の進化により、その後デジタル経済が急速に発展にともない、主要な産業がデジタルを利用したサービス業に移っていきました。ここ数年でデジタル・サービス産業も安定・変革期に入り成長が鈍化すると、経済における製造業の重要さを再認識しはじめました。

2025年年初に、製造業を発展すべきか否かではなく、どのように発展すべきかを真剣に考えなければならにステージに来たと、地元報道機関である杭州日報でも語られています。

2023年と比較して、2024年のGDPの増加額は1年で900.32億元であったのが、2025年Q3までですでに1,685.22億元に達しており2倍以上の増加額が期待されています。

杭州が目指しているのは、労働集約型の昔ながらの製造業ではなく、「消灯工場」のような最先端技術を利用したロボット中心の工場やイノベーション駆動型の「人工知能+」を取り入れた現代にあった製造業の創造と転換です。

2022年頃から、科学技術革新を核とする新興の製造業、例えばスマートIoT、バイオ医薬、ハイエンド機器、新素材、グリーンエネルギーなどの分野の育成をはじめたことが、具体的な数字に反映されてきました。

GDPがほぼ同じ第9位の武漢は、製造業に強みを持っていると言われているものの実は自動車産業を始めとして通信機器、エネルギー関連など、1000億元産業が4つにとどまっています。杭州には1000億元産業が6つあり、サービス業という強みもあることから8位と9位の差は簡単には埋まらないとみられています。
また、6位にランクインしている蘇州は、高水準でGDP額が安定かつ人口数もほぼ一緒、もともと製造業に強い土壌であることなど、同じような特徴を持っており、「蘇州に並ぶ勢いのある杭州」と言われています。

杭州の街並み

まとめ

ここ数年、自動車産業や不動産関連の停滞から北京・上海・深圳に遅れをとっていた広州と、インターネット時代を牽引しているものの改めて産業を見直し、製造業とインターネットや最新技術の融合で新たな産業を創造している杭州。
どちらも製造業という重要な産業を、時代に沿った形で改革・実行し、少しずつその効果が数字に表れてきています。

* 広州の経済が底打ち、回復傾向
* 直轄市以外の二線都市では、安定の「蘇州」と勢いの「杭州」が注目株
* 成都・武漢もGDPは伸びている
* GDPの伸びのキーポイントは、製造業の質の高い新たな発展にあり

最後までお読みくださり、ありがとうございます。中国情報のアップデートに少しでもお役に立てたら幸いです。
本ブログは、中国で発表されたニュースを元に、現地で30年以上続く日本の金型メーカーの経営者目線で最新情報としてまとめてお届けしています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次