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【連載】中国注目の5大産業 | 政策ドリブン「十四五」最終年の動向から②

中国注目の5大産業 | 政策ドリブン「十四五」最終年の動向から
目次

中国注目の5大産業 | 政策ドリブン「十四五」最終年の動向から②

前回は、国民経済と社会発展に関する5カ年計画、「十四五」の意味と、その内容についてお伝えしました。
国の重点産業を強く意識して自社の戦略を考えている中国の経営者やイノベーターたちは、今どのような産業に注目しているのでしょうか。

「十五五」などの政策の方向性をから、注目されている5大産業について解説していきます。

1.「十四五」って何?
2. 2025年は「十四五」最後の年
3. 中間まとめと次回予告

4.「十五五」、2035年までの長期目標に向けて
5. 注目の5大産業
6. 総まとめ | 中小企業向けビジネスのヒント

4. 「十五五」、2035年までの長期目標に向けて

この秋にはガイドライン(ダイジェスト版)が発表され、12月ごろまでに党内会議でほぼまとまり、来年2026年3月の「全人代」で承認されることとなる「十五五」。

どのような「目標」が制定されるのか、すでに様々な議論が展開されていますが、「十四五」最終年の今年後半からのキーワードとして、「新質生産力」「強靭性」「国内消費」など挙げられています。

単なる翻訳では理解しがたい内容ですが、
例えば「新質生産力」については、中国中央電視台(CCTV)の説明では、「技術の革命的なブレークスルー、生産要素のイノベーティブな配置、産業構造の深い転換・レベルアップにより生み出される先進的な生産力が経済を活発にし、人々の生活をより豊かにする」という概念を表しているそうです。

簡単にいうと、中国製造を労働集約型の工場から技術集約型、付加価値の高い製造業強国に発展させることを目的とした「中国製造2025」が一定の効果を生んでいる背景から、新エネルギー、新素材、先進製造、電子・情報など戦略性のある新興産業を積極的に育成し、中国の強靭なサプライチェーンを強みとして技術革新で発展していけば、経済が活性化して、一般市民の収入につながるという意味です。

今後は1つのスローガン的な使われ方をしていくと思われます。

5. 注目の5大産業

「十四五」「十五五」の重点や、今年話題となっている業界などから、これから注目されていくであろう産業をピックアップしました。

ロボット・AI・仮想空間産業

ヒューマノイド、協働ロボット、工場や物流倉庫の自動運搬AGV、製造業のメタバース・ブロックチェーン活用

低空経済

中国では高度1,000メートル以下の低空空域を利用したビジネスの総称。ドローンによる物流や、観光用eVTOL(電動垂直離着陸機)など新しい空間を使ったビジネスを創造

フードテック・アグリテック

食の安全、健康へのこだわり、生産者(農業)の保護、地域格差是正

医療・ヘルスケア産業、シルバー経済

少子高齢化、手軽で身近な健康機器、AI診断・遠隔診療、介護ロボットやパワーアシストスーツ、最先端高度医療(ブレインマシンインターフェイス医療)

グリーン経済

カーボンニュートラル、省エネ技術、国家重点産業。廃熱や地熱を使った発電システムや、蓄電技術など。

スマート製造(伝統的な製造方法とAI・IoTなどデジタル技術の融合)がさらに進化していくことは間違いなくありません。
他国から技術や物を買う時代から、すでに自分たちで研究・開発しイノベーションを起こす時代に入っています。
特にデジタル分野ですでに世界トップクラスを誇る技術に加えて、減少傾向ではあるものの13億人以上の人口を有する大きな市場という新技術・新サービスの応用の場を持つ中国は、今後も強国入りという目標に向かって、進んでいきそうです。


一方で、人口減少や高齢化も進んでいます。


消費の後退や働き手の減少などから先行き不安も拡大しており、企業から見れば経済の急速な発展は見込めないため、今までのような積極的な投資はしにくい状況になっています。
1990年代から本格化した民営化政策や2001年WTO加盟後に起業をした世代が、二代目・三代目へと世代交代時期にさしかかっています。

これからは、今までのようなローエンド型の破壊的イノベーションだけではなく、新市場型の破壊的イノベーションと持続的イノベーションのバランスを取りながら進めていく必要があり、企業の資金力・人材・戦略などがより重要となるでしょう。

AI生成イメージ

6. まとめ | 中小企業向けビジネスのヒント

中国では、「国民経済と社会発展に関する5カ年計画」で示された指標に沿って産業や経済を俯瞰し、ビジネスを展開していることを2回にわたってお伝えしました。

特に中国の中小企業は、「創新型中小企業」「専精特新中小企業(専門性を磨き、特殊性を高める)」への転換、さらにその中から頭一つ飛び出るような「小さな巨人」となることなど、新技術開発やイノベーション創出が奨励されていて、税優遇や入札への優先参加など成長をサポートする措置があります。

逆に言うと、この流れについていけない企業は淘汰される可能性が高く、自社の経営戦略の上で注目すべき指標となっています。

中国で新たな事業を展開する際や、現在の事業戦略をブラッシュアップする際には、是非参考にしてみてください。

日本の中小企業向けビジネスのヒント
* 中長期的な目標の共有とミッション・権限明確化;中国の「政策ドリブン産業」から、企業内イノベーションの協業先を探す
* フードテック(健康・代替食品)やドローン物流ソリューションの実証フィールドとして中国拠点を活用、成功事例として日本へ逆輸入
* ノウハウ輸出の検討;企業の世代交代をスムーズに実現する人材研修や、共同研究・技術提携などのノウハウを中国SNSを利用してビジネス化。

最後まで読んでいただきありがとうございました。この記事から何かしらのヒントや情報を得てくださり、少しでもお役に立てたなら幸いです。

本ブログは、実際に中国で工場経営をしている立場から、中国メディアのニュースを元に現場でのリアルな状況を加えて、独自に執筆しています。
中国情報をアップデートし、中国の事例から日本の中小企業が学べる未来のヒントを発信しています。

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