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【連載】中国注目の5大産業 | 政策ドリブン「十四五」最終年の動向から①

中国注目の5大産業 | 政策ドリブン「十四五」最終年の動向から
目次

中国注目の5大産業 | 政策ドリブン「十四五」最終年の動向から①

最近日本から来た方の「中国ってすごい都会なんだ~」「以前に来た時と全然違う!」という声を聞くことが増えています。
ロボットやAI、電気自動車、デジタル決済、TikTok(抖音)やSHEIN(シーイン)など、中国に「デジタル先進国」「新カルチャー」のイメージを持つ方が、実際に自分の目で見て、体験したことで実感している率直な感想だと思います。

 では、中国国内では今&これからどういった産業やサービスが注目されているのでしょうか。
中国の経営者やイノベーターたちが業界全体の方向性や注目産業を洞察するとき、「十四五」「十五五」など呼ばれる国民経済と社会発展に関する5カ年計画から国の重点産業を読み、強く意識しています。

本記事では、①「十四五」「十五五」とは何か、政策の方向性を紹介し、②中国で注目されている5大産業について、2回に分けて解説していきます。

1.「十四五」って何?
2. 2025年は「十四五」最後の年
3. 中間まとめと次回予告
4.「十五五」、2035年までの長期目標に向けて
5. 注目の5大産業
6. 総まとめ | 中小企業向けビジネスのヒント

「十四五」って何?

国が5年を区切りとして目標と施策を定めた中期経済計画のことで、中国では1953年に第一回5カ年計画が制定されました。
2020年から2025年までの5カ年が第14回にあたることから略して「十四五」(第十四回目の五カ年計画)と呼ばれています。

中国ではこの5カ年計画は「政府および地方自治体、あるいは各企業・事業団体がおこなうべき経済運営政策や事業計画」であり、指標となっています。
 また、2021年の全人代(全国人民代表大会。中国において、最高国家権力機関で例年3月ごろに開催されます)では、2035年までの長期目標も示されました。

<2035年までの長期目標>
抜粋。2021年発表当初から毎年ブラッシュアップされているため現在の内容と異なります。

  • 1人当たりの国内総生産(GDP)を中位の先進国並みに引き上げる
  • 主要分野の核心技術で重要な突破(ブレークスルー)を成し遂げ、イノベーション国家の先頭に並ぶ
  • 都市と農村の格差是正に取り組む

 どう実施していくか、具体的な内容や目標数値などは、5カ年計画や毎年の全人代で調整・承認されます。
その数カ月に詳細が発表されたりさらに議論を重ねて新しい目標が追加されることもあります。
経済や社会がどのように変わっていくか、目指すべき方向を読むためにも注目されている「5カ年計画」なのです。

2025年は「十四五」最後の年

2025年は「十四五」の最後の年にあたります。

最終年の第二四半期ごろまでに残りの半年で目標達成するための最終確認および調整、秋ごろに会議を開催したのち「十五五」のガイドラインを発表、その後「十四五」の総括へと向かっていきます。
5カ年計画の最終年は企業も政府も比較的規模の大きな「年会」を開催する傾向にあります。

<「十四五」の主な内容
1. イノベーション促進
2. 産業の高度化
3. 内需拡大
4. 改革深化、高レベルの社会主義市場体制の構築
5. 農業・農村の発展
6. 地域間の協調的発展、新型都市化の推進
7. 文化産業の発展、ソフトパワーの向上
8. グリーンな発展、人と自然の共生推進
9. 高レベルの対外開放の推進
10. 生活の質改善
11. 次世代交通・低空経済

2020年秋にガイドラインが発表され、「十四五」1年目の2021年3月の「全人代」で発表された、ものすごく漠然としている「目標」です。
しかし、最終年の今年に改めて見てみると、「目標」が達成されていることがわかります。

例えば、新エネルギー自動車。 2025年8月の新車販売数を見ると、新エネルギー自動車が全体の4割を占めています。
新エネルギー自動車によって、 1. イノベーションの促進 2. 産業の高度化 8. グリーンな発展、人と自然の共生推進 10. 生活の質改善 などに大きく貢献していると言えるでしょう。

 また、自動運転システムは、スマートシティの仕組みを創り出し、6. の新型都市化の推進につながり、バッテリーなど技術の高度化を通じて、11. 次世代交通・低空経済の空飛ぶタクシーなど新たな産業を牽引しています。

  9. 高レベルの対外開放の推進は「一帯一路」として、政府が企業の海外進出を後押ししています。 1. イノベーション促進や2. 産業の高度化は「中国製造2025」として、2025年までに製造強国入りを目指す産業戦略が進んでいます。

 例として、小米のダークファクトリーに代表される工場の無人化や、重点分野とされた工作機械・ロボット、半導体などの次世代情報通信技術などの分野で、技術や新材料の研究と応用が進んでいます。 7. 文化産業の発展、ソフトパワーの向上は今年世界中で人気になった、POP MART(ポップマート)の「LABUBU(ラブブ)」など、国内外で見ることができる中国文化や流行が生まれています。

 目標と実際の世の中の動き、経済を照らし合わせてみると、5カ年計画の達成状況が見えてきます。 中国国内ではこの五カ年計画を科学的に策定し、継続的に実施していくことは、国政運営の重要なノウハウであり、中国式現代化の推進にとって極めて重要な意義があるとされいるのです。

2025年「十四五」の最終年、達成の具体例
▼ 新エネルギー自動車(NEV):2025年新車販売の約4割
→ 1.イノベーション促進, 2.産業の高度化, 8.グリーンな発展、人と自然の共生推進, 10.生活の質改善などに寄与
→ 自動運転・スマートシティは、都市化と新産業創出に直結

▼ 工場無人化・ロボット・半導体:産業高度化「中国製造2025」と連動

▼ 文化産業の発展、ソフトパワー:POP MART「LABUBU」など世界的人気コンテンツの誕生

中間まとめと次回予告

中国注目の5大産業を洞察するために不可欠な、政策ドリブン「十四五」についてお話しました。

「国民経済と社会発展に関する5カ年計画」とは、
• 中国政府が 5年ごとに経済・社会の発展目標と施策を定める中期計画。
• 1953年に第1回が開始、2020年からは第14回(通称「十四五」)。
• 国家だけでなく、地方政府・企業の政策や事業計画の指標となる。
• 毎年の 全人代(全国人民代表大会) で調整・追加が行われる。
• 今年2025年は「十四五」の最終年。成果確認・総括・次期「十五五」準備の時期でもある


次回は、2026年からの第15回「十五五」と、注目の5大産業を具体的に解説します。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事から何かしらのヒントや情報を得てくださり、少しでもお役に立てたなら幸いです。

本ブログは、実際に中国で工場経営をしている立場から、中国メディアのニュースを元に現場でのリアルな状況を加えて、独自に執筆しています。
引き続き、中国情報をアップデートし、中国の事例から日本の中小企業が学べる未来のヒントを発信して参ります。

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